チェリー

それは春というにはまだ早く、冬と言い切るには少し遅い季節のことで、大学入試の二次試験も終わり、あとは卒業式と結果発表を待つだけのなんだか地に足がつかないような、そんな時期だった。 授業はとっくに終わっていて自由登校だったから、どうしてあの日…

僕は正しく厨二病なので。

僕は正しく厨二病なので、煙草やお酒やバイクみたいないかにも体に悪くて、PTAが顔をしかめるような、そんなものに心惹かれる。 もちろん盗んだバイクで走り出して、夜の校舎の窓ガラスを壊して回れたら、それは最高なんだけど、僕は尾崎豊の「15の夜」を聴…

特別寄稿:ワンピース

<今回のは僕が書いた作品ではないのですが、「書いたけど、発表の場がないから君のとこに載せてくれよ」と言われたので特別寄稿作品です。> 「私、ワンピースって嫌いなの」なんの脈絡もなくいきなり彼女が話出した。彼女の話はいつも突然だ。「ねぇ聞いてる…

変身

ある朝、僕がなんだかふわふわした夢からふと目覚めてみると、隣に眠る彼女が一羽の皇帝ペンギンに変わってしまっているのに気がついた。 それはもちろん、「猫みたいな女の子」のような、つまらない比喩ではなくて、彼女には嘴もあるし平べったい翼もある。…

風鈴

君に名前を呼ばれた気がした。窓際の風鈴がただ、寂しげに鳴いていた。 それは君が好きだった7月のよく晴れた空の色をしていて、そんなどうだっていいようなつまらないことが、僕にあの日の幼い約束を思い出させた。 ◆ あの頃、僕は潰れかけの美術部のたった…

僕は短編集が好きだ。

僕は短編集が好きだ。昔は「なんだか物足りない」と思って読んでいたけれど、いつの間にか僕は短編の正しい楽しみ方を身につけていたらしい。短編集は音楽で言うところのベストアルバムみたいなものなんじゃないかと僕は思う。 長編を読むほどの体力はないけ…

あの曲を聴くと

大学受験が迫った高校三年の冬、授業もほとんど課外に切り替わって、学校に来るも来ないも任意の期間。僕はストーブで温められた図書室で勉強をしていた。 これは何も僕に限った話じゃないと思うけど、勉強をしながらよく音楽を聴いていた。(もちろん音楽を…

世界の終わりとなんとやら

セカイが終わるところに立ち会いたい、と思う。それはもちろん僕らが生きるような広い「世界」の話であり、当然それよりもむしろ、誰かの恋心で終わる小さな「セカイ」の話だ。 90年代から2000年ごろまでかけてサブカルチャー作品群を席巻した、「君と僕」の…

Take Me Home Country Roads

僕が今住んでいるかの街は都会だ、なんていうと東京や世界の大都市で暮らしている人たちから怒られるかもしれないけれど、少なくとも僕は、何本も地下鉄が通っていて市の人口が僕の生まれた県の全人口にほぼ等しいこの街を都会だと思って生活している。 都会…

ブックオフに売ってないもの

「TOEFLの参考書がブックオフに売ってねえ!」って叫びを見た。 僕の個人的な感想として、どのブックオフを探してもなかなか見当たらないものNO.1はハヤカワSF文庫の特別面白いやつだ。他のものは大概売ってる。たぶん、愛や勇気や希望とかだって探せば置い…

そんなことはどうでもよくて、僕は焼き鳥が食べたい

夕暮れ時、東北の田園風景をディランの「風に吹かれて」を聴きながら電車で走り抜ける。村上春樹は確か「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の中でディランの歌声を「雨降りの日に小さな男の子が窓の外を見つめるような声」と評していた。 僕にと…

夜明けと駄文

気がつけば6月で、もう今月で今年も折り返しだと思うと感慨深い。そもそも年始に新年の目標なんて大層なものを建てた覚えもないので当然達成の目処も立っていない。そうして今年も夏の足音はまるで日曜日の夕方に忍び込む憂鬱のように確かに今日に近づいてき…

憂鬱な午前七時前

大学に入って一年経って、すっかり怠惰な生活が身についてしまった。今となってはもう、どうやって中学の運動部時代を乗り越えたのか、高校に通うために毎朝6時に起きていたのか全く思い出せないし、もしもう一度やれと言われたとしたら断固拒否したい。 〈…

お知らせ

またなんとなく文章が書きたくなったので、パソコンが壊れて更新しなくなったホームページに書いていた文章を移植してみた。またぼちぼち書いていこうと思う。

それは誰のものでしょうか

これは何もインターネット上に限った話ではないんだけれど、僕らは「誰が何を言っているか」を判別するとき意外なほどに”誰の言葉やコンテンツであるか”という部分に価値のかなり大きな割合を振り分けている気がする。 コンテンツや言葉の発信者に注目するこ…

君の瞳で世界を見ること

小さな頃、新しいことを学ぶと世界が変わって見えた。「太陽の光は実は7色なんだよ」って聞いた次の晴天の日、世界は虹色に見えたし、「あの星の光は1万年前の光なんだよ」と知った日の夜空はいつもよりも深い色に見えた。 高校生になってイデア論を知ったと…

ロックンローラーの君へ

以前、高校の一部の教員から睨まれている軽音楽愛好会の友人に「部活じゃないと、活動に制限があって、教師からも目をつけられて大変じゃないか?」と聞いたことがある。彼の返事は「権力に認められたらそんなものはロックンロールじゃない」というものだっ…

今はない夜と午前四時

世界は日々狭くなっていく、と思う。もちろんそれは各地の秘境が観光地と化して行くって話でもあるんだけど、僕がここで言いたいのはもっと個人的な話だ。例えばそれは幼い頃、どうしても起きていられなかった深夜2時だったり、学校の帰り道に見つけた、どこ…