コラム

春の夜

春生まれだけれど、一年のうちで春の夜が一番苦手だ。 決して嫌いというのではなくて、ただただ苦手だ。 夏の夜は蚊取り線香の匂いを嗅ぎながら空気にうっすらと残る熱と昼間の苛烈さによって強調される静けさを愉しめばいい。 秋の夜はゆっくりと本を読んで…

僕が眼鏡を嫌いな理由

僕は眼鏡が嫌いだ。 眼鏡っ娘についてはまた別種の(宗教論争的意味を持った)議論が必要とされるけれど、少なくとも僕は、大変お世話になっているにも関わらず、自分でかけている眼鏡が嫌いだ。 僕の心には一つの言葉が楔のように呪いのように突き刺さってい…

10枚で1000円のアルバムの8枚目

僕が愛してやまないTSUTAYAで時折「旧作のCD十枚で千円」というキャンペーンを行っているのを見かける。僕も度々この企画の恩恵に預かってというか、見事に彼らの策略にハマってというか、CDを借り込むのだけれど、この「十枚」という枚数が案外に難しい。 …

僕は正しく厨二病なので。

僕は正しく厨二病なので、煙草やお酒やバイクみたいないかにも体に悪くて、PTAが顔をしかめるような、そんなものに心惹かれる。 もちろん盗んだバイクで走り出して、夜の校舎の窓ガラスを壊して回れたら、それは最高なんだけど、僕は尾崎豊の「15の夜」を聴…

僕は短編集が好きだ。

僕は短編集が好きだ。昔は「なんだか物足りない」と思って読んでいたけれど、いつの間にか僕は短編の正しい楽しみ方を身につけていたらしい。短編集は音楽で言うところのベストアルバムみたいなものなんじゃないかと僕は思う。 長編を読むほどの体力はないけ…

あの曲を聴くと

大学受験が迫った高校三年の冬、授業もほとんど課外に切り替わって、学校に来るも来ないも任意の期間。僕はストーブで温められた図書室で勉強をしていた。 これは何も僕に限った話じゃないと思うけど、勉強をしながらよく音楽を聴いていた。(もちろん音楽を…

世界の終わりとなんとやら

セカイが終わるところに立ち会いたい、と思う。それはもちろん僕らが生きるような広い「世界」の話であり、当然それよりもむしろ、誰かの恋心で終わる小さな「セカイ」の話だ。 90年代から2000年ごろまでかけてサブカルチャー作品群を席巻した、「君と僕」の…

Take Me Home Country Roads

僕が今住んでいるかの街は都会だ、なんていうと東京や世界の大都市で暮らしている人たちから怒られるかもしれないけれど、少なくとも僕は、何本も地下鉄が通っていて市の人口が僕の生まれた県の全人口にほぼ等しいこの街を都会だと思って生活している。 都会…

ブックオフに売ってないもの

「TOEFLの参考書がブックオフに売ってねえ!」って叫びを見た。 僕の個人的な感想として、どのブックオフを探してもなかなか見当たらないものNO.1はハヤカワSF文庫の特別面白いやつだ。他のものは大概売ってる。たぶん、愛や勇気や希望とかだって探せば置い…

そんなことはどうでもよくて、僕は焼き鳥が食べたい

夕暮れ時、東北の田園風景をディランの「風に吹かれて」を聴きながら電車で走り抜ける。村上春樹は確か「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の中でディランの歌声を「雨降りの日に小さな男の子が窓の外を見つめるような声」と評していた。 僕にと…

夜明けと駄文

気がつけば6月で、もう今月で今年も折り返しだと思うと感慨深い。そもそも年始に新年の目標なんて大層なものを建てた覚えもないので当然達成の目処も立っていない。そうして今年も夏の足音はまるで日曜日の夕方に忍び込む憂鬱のように確かに今日に近づいてき…

憂鬱な午前七時前

大学に入って一年経って、すっかり怠惰な生活が身についてしまった。今となってはもう、どうやって中学の運動部時代を乗り越えたのか、高校に通うために毎朝6時に起きていたのか全く思い出せないし、もしもう一度やれと言われたとしたら断固拒否したい。 〈…

それは誰のものでしょうか

これは何もインターネット上に限った話ではないんだけれど、僕らは「誰が何を言っているか」を判別するとき意外なほどに”誰の言葉やコンテンツであるか”という部分に価値のかなり大きな割合を振り分けている気がする。 コンテンツや言葉の発信者に注目するこ…

君の瞳で世界を見ること

小さな頃、新しいことを学ぶと世界が変わって見えた。「太陽の光は実は7色なんだよ」って聞いた次の晴天の日、世界は虹色に見えたし、「あの星の光は1万年前の光なんだよ」と知った日の夜空はいつもよりも深い色に見えた。 高校生になってイデア論を知ったと…

ロックンローラーの君へ

以前、高校の一部の教員から睨まれている軽音楽愛好会の友人に「部活じゃないと、活動に制限があって、教師からも目をつけられて大変じゃないか?」と聞いたことがある。彼の返事は「権力に認められたらそんなものはロックンロールじゃない」というものだっ…

今はない夜と午前四時

世界は日々狭くなっていく、と思う。もちろんそれは各地の秘境が観光地と化して行くって話でもあるんだけど、僕がここで言いたいのはもっと個人的な話だ。例えばそれは幼い頃、どうしても起きていられなかった深夜2時だったり、学校の帰り道に見つけた、どこ…