僕は短編集が好きだ。

僕は短編集が好きだ。昔は「なんだか物足りない」と思って読んでいたけれど、いつの間にか僕は短編の正しい楽しみ方を身につけていたらしい。短編集は音楽で言うところのベストアルバムみたいなものなんじゃないかと僕は思う。

 

長編を読むほどの体力はないけど、その作者の言葉に触れたいときとか、(長い小説はとても面白いし、作者の魂や哲学に触れられるのもそちらだと思う。けれど長編を読むのはなかなか疲れるのだ)なんとなく良いものが読みたいとき、短編はその力を発揮してくれる。(まるでヒットソングを並べて作られたベストアルバムみたいに。)

 

無駄な飾りがなくて、必要なものを必要なだけ放り込んで作られた短編はよくできた武器や道具のような機能的な美しさがある。もちろん、それが映画であっても小説であっても漫画であっても。

 

余談だけど僕が大好きな村上春樹も初めて読むなら1Q84とかノルウェイの森のじゃなくて短編集かエッセイが馴染みやすいんじゃないかと個人的には思う。ちなみに一推しは「回転木馬のデッドヒート」だ。なんたって前書きが痺れる。