特別寄稿:ワンピース

<今回のは僕が書いた作品ではないのですが、「書いたけど、発表の場がないから君のとこに載せてくれよ」と言われたので特別寄稿作品です。>

 

「私、ワンピースって嫌いなの」
なんの脈絡もなくいきなり彼女が話出した。彼女の話はいつも突然だ。
「ねぇ聞いてる?私ワンピースって嫌いなの」
僕が返事をしなかったせいだろう。彼女は繰り返した。僕は慌てて返事をする。
「どうして?」
「最初から1つでも着られるものなんて興味がないの。だって洋服って、1つじゃ着られないものを組み合わせるから楽しいんでしょう。」なるほど彼女らしい。

そういえばあの日、僕らの関係が始まった日も彼女は同じようなことを言っていた。
「母さんには、父さんなんか必要なかったのよ結局。あの人は1人で生きていけるの。」
「でも、それじゃダメだったのね父さんは。だからつい必要としてくれる人のところへ行ってしまったんだわ。」
普段強気な彼女が、珍しく僕にもわかるほどに落ち込んでいた。
僕は正直なところ、1人で生きられないような弱い人間が、誰かと共に生きていけるはずはないと思った。彼女の父さんはただ、今、この場所から逃げ出しただけに過ぎないと。
けれど、そんなことを言ったらきっと彼女は泣いてしまっただろう。彼女は、彼女の母さんのことも父さんのこともすきだったから。

彼女は1人で生きられるほど強くはなかった。胸にぽっかりと空いた穴を何かで埋めずにはいられなかった。

だから僕とこうして毎週のように関係を持つ。別な日は別な誰かとこうして過ごしているんだろう。そんな彼女を受け入れてしまっている自分でもどうかと思う。だがしかし、どんな形であれ必要とされていることを嬉しく感じてしまう僕がいるのだ。惚れた弱みってやつだろう。あの日寂しそうに笑う君を耐えられなくなって抱きしめた日に、僕はとっくに終わっていたのだ。

また今日も彼女は僕を求める。僕は求められるままに彼女に応える。

僕も、ワンピースは嫌いだから