嘘つきシューティングスター

風の噂で、君が結婚すると聞いた。

つけっぱなしのラジオから、チープで賑やかなヒットソングが流れる、星の綺麗な夜に。

 

君がこの部屋を出ていってから、もう二年になる。その間に、色々な女の子と付き合ったけれど、この部屋の細かなところには未だに君の香りが少し残っているような気がする。

君が選んだカーテン、君がくれた目覚し時計、君が好きだったアーティストのアルバム。

何が原因で別れたのだったか、あまり覚えていない。たぶん、小さなエラーが積み重なって、いつのまにか大きな溝になっていたのだろうと思う。

とっくに終わった恋だから、そんなに胸は痛まないけれど、君のことを考えるとなんだか懐かしく暖かな気持ちになる。

 

柔らかな匂い、鈴のなるような軽やかな声、静かな秋の夜のような瞳。靴を履くときにいつも左足から履く癖、髪を洗ってもらうのが好きなこと。初めて見る積もった雪にはしゃいで風を引いたこと、控えめな胸、白く細い指。

 

どうか、誰よりも幸せになってほしいと思う。あの日のずっと一緒にいようという幼い約束は寂しい嘘になってしまったけれど、この思いに嘘はない。

 

ベランダに出て煙草に火をつける。そういえば君は僕が煙草を吸うのを嫌ったっけ。

 

風に流されて雲に変わる煙草の煙を見つめていると、視線の先で流れ星が空を駆けた。

僕のサヨナラが、流れ星に乗って君に届けばいい。この嘘みたいに美しい星の夜に。