Be strong now
じいちゃんが教えてくれたBe strong now を口ずさむ。有名な曲だし、たぶん、君も一度はどこかで聞いたことがあるんじゃないかと思う。
空梅雨で雨が少ないから、大きな橋の下を流れる川の水量もこころなしか少ないように思える。春と言うにはだいぶ遅く、夏と呼ぶには少し早い。そんな季節のことだ。
大学進学に合わせてこの街に引っ越してきてもう三年以上経つ。それでも休日に(もっとも大学生なんて一年の半分以上休日のようなものだけれど)散歩をしていると、まだまだ知らない道があることを思い知らされる。
じいちゃん曰く、Be strong now はそばにいられない恋人に歌った歌らしい。
東京で君は元気にやっているだろうか?
君が知らないこの街の景色をたくさん君に送ろう。僕と君が住んでいたこの街の景色を。
そして君が少しだけ東京に就職したことを後悔して、僕に会いたくなればいい。寂しいと、電話をかけてくればいい。
僕らは強くならなくたっていい。一人では歩けないくらい弱いなら二人で歩けばいい。
遠くの焼却場の煙が空に消えていく。
あの煙が入道雲になった頃、君に会いに行こう。