10枚で1000円のアルバムの8枚目

僕が愛してやまないTSUTAYAで時折「旧作のCD十枚で千円」というキャンペーンを行っているのを見かける。僕も度々この企画の恩恵に預かってというか、見事に彼らの策略にハマってというか、CDを借り込むのだけれど、この「十枚」という枚数が案外に難しい。

 

大抵、七枚目くらいまではあっさりと借りたいCDが見つかるのだけれど、それ以降がなかなか決まらない。結局、仲の良い誰かが好きなアーティストやなんとなく名前だけ聞いたことがあるようなアーティストのCDを借りることになる。
そして、いざ聞いてみると狙っていたCDよりも数合わせで借りたものの方が、なんだか自分にしっくりくるような気がして、そんなとき、誰に対してかはわからないけれど、僕は確かな優越感と幸福感を抱くことになるのだ。

 

人生における大切な出会いには「数合わせで借りた九枚目のCD」のようなものが割に多い。(もちろん1枚目の狙ったCDが素晴らしい場合も多々あるが)それは偶然と気まぐれによる産物であり、数合わせに呼ばれた合コンで出会う女の子であり、たまたま隣の席に座った女の子であり、またあるいは喫煙室で火を借りた少し歳上の男かもしれない。
そして結局のところ、その価値は後になってからしか、知ることができない。

それはちょうど、僕らがTSUTAYAで借りた数合わせのアルバムの良し悪しを、聴いた後でなければ知ることはできないのと同じだ。

 

そうして僕は、今日もTSUTAYAに向かう。返却とレンタルの輪廻から、逃れられないままで。